| ・お墓を立てる時期 仏教では元来お墓を作るという習慣がなかったせいか、お墓をいつ建てるかなどについての規定はありません。いつ建ててもよいのです。ただし、仏教では「回向(えこう)」、「追善供養(ついぜんくよう)」というものがあります。 回向とは、生き残っている者が行った善行を死者に振り向けて 功徳を積んでもらい、成仏の助けにしてもらうという事であり、追善供養というのは、死者の冥福を祈って催し事をすることです。したがって、遺族の全員が故人の事を心から供養しようと思った時が建墓にふさわしい時期といえるでしょう。 一般的には四十九日、百カ日、一周忌、三回忌、新盆、彼岸などの法要の時ということになるでしょう。 ・寿陵(生前墓) 近年では、生前に自分のお墓を建てておく人も増えつつあります。これを「寿陵」といいます。寿陵は、中国の古い書物にもある言葉で、秦の始皇帝をはじめ歴代の皇帝も作ってきました。 寿を「ことぶき」「ことほぐ」と読むようにおめでたい事とされています。墓碑銘に赤いエナメルを入れたお墓がそれで、本人が死ぬと墨を入れる習わしです。 特に都市部ではこの寿陵が目立ってきました。これは墓地不足への 対応策として、早目にお墓を確保しておきたいという気持ちの表れでしょう。一説によると、この二十年間のうちに都市の霊園では 50%から70%近くまで寿陵が占めてきたという事です。寿陵を「生前墓」とも言います。 寿陵には二つのケースがあります。生前に自分のお墓を建てる場合と、夫婦のどちらかが亡くなった時に夫婦のお墓を建てる場合です。前者を「個人墓」と言い、後者を「夫婦墓」または 「比翼塚(ひよくづか)」などと言います。「比翼」の名は、中国の伝説の鳥に由来します。この鳥は、翼が一つしかないので 夫婦二羽が並んではじめて飛ぶ事が出来ると言われています。このことから夫婦二人で力を合わせて仲むつまじい事を「比翼連理」などと言いますが、そこから来ています。 個人墓や夫婦墓を建てる時は、存命中でも戒名をもらう事に なります。そして、墓石に存命中の人の戒名は朱字で書き込みます。 また、昔から寿陵を建てる時には、逆修といって生前に自分や配偶者のお葬式を出し、戒名をもらって位牌を作りました。逆修の「逆」は「あらかじめ」という意味で逆修の法要を営んで寿陵を建てる事は大変功徳のある縁起の良い事とされています。現在でももちろん、お寺に頼めば逆修の法要を営んでくれます。 よく生前にお墓を建てたり、自分のお葬式を出したりすると、早死にするとか、縁起でもないなどと何の根拠もない無責任な迷信があるようです。しかし、実はとてもおめでたい事なのです。 お釈迦様は、お経(地蔵本願経)の中で「生前に死後の仏事を修めておくと、その幸せは無量で計りしれない」と教えています。 さて、最近、この寿陵が公営墓地などで急増しています。公営墓地の多くが購入後一、二年のうちにお墓を建てる事を義務づけている事が、寿陵が増えた大きな原因です。ただし、大都市圏の公営墓地では、墓地不足からほとんどの霊園が現に遺骨がある事を応募の条件としている所が多く、寿陵を建てる事は出来ません。寿陵が建てられるかどうか事前に調べておいたほうがよいでしょう。 |